SUEMARR "Old Note"  ( 2005 - 2007 )

オールド・ブック 2005/10/14



見事に山積みにされた本の
山と山の険しい谷間を注意深く歩いた。
宝はどこかに埋まっている。
ワクワクしながら山を見上げていると
背後から力士級の体格の男性が近づいて来た。
この狭く険しい谷間を歩くにはとても無理な体型であることは
一目瞭然だったが、その年配の力士は山の主だった。
自分の山小屋に辿り着くのにかなり苦労していた。

「もうちょっと痩せなさいよー」

山の主の奥方が山の反対側から怒鳴った。

「運動する時間なんてねーんだよ」

と小声で応戦していたが、奥方のいる谷までは
届いていないようだった。
山の主は何とか自分の山小屋まで辿り着いた。
再びオレは高くそびえ立つ山に見とれながら

「山崩れが起こるのは時間の問題だ」

と心の中で確信した。



水道橋で仕事した後に
久しぶりに神保町まで歩いた。
果てしなく立ち並ぶ古本屋に
誘われるままに入った。
足が痛くなったが次の古本屋に入ると
すっかり痛さを忘れてしまう。
いろいろな人の詩集を眺めたり捲ったりした。
大正〜昭和あたりの装丁は
外観を見るだけでも惚れ惚れする。
ページごとに繰り返し刷りこまれた
版画のようなイラストに、
一字一字を拾った写植と紙の荒い感じ。
印刷ではなく直に押された検印の印鑑。
いいなあこの感じ。

もちろん大好きな詩人の初版本も見つけた。
買わなかったけどね。
危ない危ない。

我にかえって時間を見てから
酒を買って九段下のマモ宅まで歩いた。



前へ | 次へ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41
| 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82
(C) SUEMARR.COM 2008