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不滅の男は派手なスーツを着ていた。
自転車に乗ったまま武道館に入り
そこにそびえ立つアンプ富士山の頂上で歌い
中腹にある四畳半の部屋で座って歌い
麓のすすきが生えるあぜ道のバス亭で歌い
再び自転車に乗って武道館を出て
そのまま映像から抜け出して来た。
不滅の男は派手なスーツを着ていたが
金色のブーツを忘れて来てしまった。

不滅の男は
何匹も何匹も不滅のネコの絵を描いた。
一人一人のために手を抜かず描いた。
オレにも描いてくれた。
握手をする時も眼をしっかり合わせてくれた。

「ありがとうございます。」

としか言えなかった。
それで満足だった。
オレの中では前から決まっていたのだから。
道のりが長いかも知れなくても。
道のりが短いかも知れなくても。
どんな道だったとしても
オレの中では前から決まっていたのだから。
不滅の男からねぎらいの言葉などいらない。
かたい握手だけで伝わったのだから。

ありがとう。

今も不滅のネコが眼の前で鳴いている。

にゃあ！





（　テアトル新宿「不滅の男」最終日。エンケン舞台挨拶。　）

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