SUEMARR "Old Note"  ( 2005 - 2007 )

シスター 2005/12/10





シスターたちは静かに
クリスマスの準備に勤しんでいた。

仕事柄、いろいろな所に行く。
先日は修道院に行ってきた。
木々が生い茂る広大な敷地の中に建っていて
見た目はとても奇麗だが築年数はとても古い。
同じ敷地内には教会と幼稚園もある。

修道院の中に入ると、
外観ほどには改装されていないせいか、
建物の本当の歴史が感じとれた。
オレは隅から隅まで歩いた。
シスターたちそれぞれが生活する小さな部屋にも入った。
小さな部屋には木製のベッドとクローゼットに机。
もちろん壁の高い位置には十字架のイエス。
机には何度も読み返したであろう本が数冊と
家族や尊敬する牧師の写真が置かれていた。

冬の陽の光が差し込む窓際で椅子に座って
クリスマスのためのお飾りを作るシスター。
オレのノックの音に気づいて静かに振り返ると
穏やかな笑顔で迎え入れてくれた。
オレは挨拶代わりに言った。

「クリスマスですね。」

「はい。毎年こうして作っているのですよ。」

シスターの丁寧な言葉づかいと
柔らかくて優しい視線には
少しの曇りもなかった。

男子禁制。なのであろうが、
許可された者ならば疑うことなく
歓迎してくれるシスターたち。
オレは不謹慎な想像をしてしまった。
修道院に入り、あの澄みきった表情になるまでに、
彼女たちにはどんな物語があったのだろう。

マリアは修道院の庭にある
池の辺りに佇んでいた。
そしてシスターたちと
同じような穏やかな笑顔で
ずっと空を見上げていた。




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