山 風 山の音楽は生き続ける。 それは姿を変えながらも あらゆる人たちの身体に染み込んでいる。 のか… 霧がかった山には 変わらず風の音が響いている… |
「 全ての始まりは楽器の出会いから 」 気心知れた友人、松田浩之は平塚にReally Musicという 楽器店を経営するMountain Music好きのミュージシャン。 彼のお店に顔を出していつものように世間話をしていた時に、オレは言ったのである。 「オレさあ。4弦バンジョーって今ものすごく興味あるんだよねえ。」 松田浩之が即答してきた。 「あ!スーマー。いーのがあるよ!自宅にさ!」 そして松田宅に行ってその楽器を目にしたとたん、オレは一目惚れした。 彼の奥方であるアキコが「これだけは売るな」と自宅に飾ってあった Stellaの1920年代の4弦Banjo。 手放したくないアキコにオレと松田浩之が土下座で(土下座はウソ)懇願。 (松田さん。嬉しいけど、ホントにいーのかそれで…) 「スーマーなら仕方ないわね…。」 アキコは渋々了承しながら 「その代わり一緒にやってよね。アタシはその音好きなんだから。」 「ハイ。」 (松田さん。いーのかほんとに…) そんなわけで弾き方もわからない4弦バンジョーを手にしたオレは 昔映像見たロスコー・ホルカムの2フィンガー奏法に見習って独学で練習。 松田浩之&アキコのライブでも弾くようになった。 ある日のこと。アキコが言った。 「トリオだし、バンド名が欲しいわよねえ。」 海の近くに住む松田浩之がぼやく。 「山の音楽をやってると、海の家とかでは一生ライブできなそうだよなあ…。」 「海風は羨ましいなあ。音楽は山だと思うんだけど、海の家に合ってるもんね。」 「じゃあ。オレたちは山風にしちゃうか。」 「お。それいーね。」 (松田さん。いーのかほんとに… いやオレも‥) 海風とはスライドギターの名手・日暮士歳朗と オープンDの魔術師・佐藤克彦のギター・デュオのことである。 こうして簡単に山風と名乗るようになった3人。 そのうち海風本人たちもその名前を知るようになる。 そんなことにビビらずに活動を続けていったある日。 4弦バンジョーのことについて少し調べてみる。(今ごろかい) どうやら昔のSwing Jazzをピックでかき鳴らす(かなり高度なテクニック)ことが 普通の奏法であることに気づいた。(今ごろかい) しかしすでにオレは2フィンガーで弾くことしか出来そうにない。 指で弾く時のコイツの音の響きが気に入っていたから、焦ることもなかった。 日本で有名なバンジョーの名手、原さとし氏と対バンとして出会った。 彼の縦横無尽な華麗なプレイに圧倒される。 そんな原さとし氏がオレのプレイを見て言った。 「そのままの奏法でこれからも続けてください。自分に合った音と弾き方があるんですよ。」 オレの気持は晴れた。 これでいーんだ。 昔の人たちだって、独学だったハズ。(特に山の人たちはね) 決まった弾き方なんてないんだ。 山風の魅力的なところはギター、マンドリン、フィドル、バンジョーという音色にもあるが、 3人が全員唄えるというところが一番の魅力である。 そして少々いい加減なところ。 そしてそして頼りになるアキコが実権を常に掌握している強弱関係。 そしてそしてそして松田浩之&アキコの夫婦喧嘩漫才も見逃せない。 そんなわけで山風は変わらず、オレの弾き方も変わらず、 今も続いているのである。 山風: 松田浩之(Vocal, Acoustic Guitar, Mandolin) アキコ(Fiddle, Vocal) スーマー(Vocal, 4strings Banjo, Acoustic Guitar) |
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